発掘物語2 | 執筆記事|同志社大学歴史資料館

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松田考古学教室

市澤 泰峰
同志社大学文学部 文化学科文化史学専攻二回生

最終更新日 2002年9月27日

 現在の現場の状況は、南地区の発掘は終了し、北地区において掘り残していた部分を急ピッチで掘っています。調査期間が九月いっぱいまでと迫ってきているため、かなり忙しい状況です。

 そんな戦場のような現場とは対照的に、今は松田さんの指導の下、学生達で2m×2mの区画を掘ったり、土層の壁面をきれいに削る作業を行ったりしています(通称松田考古学教室の考古学実習)。ここでは、いままでこの現場ではデジタルな記録の方法を使っていたため、経験することができなかった実際に手書きを使った方法などを使って遺跡の記録を残す作業も経験しています。現在は壁面の手書きでの記録をおこなっています。
 その方法としては、まずきれいにした壁面に現れた大きな層を同じ層ごとに細かく分けていく作業をします。しかし、微妙な土の色の違いを見分けるのは難しく、土の色からだけでなく、壁面を削りながらその感触の違いを頼りにしたりします。また、その分けた層一枚一枚になぜそういう堆積をしたのか説明を与えていくのですが、壁面だけからの情報だけではなく実際に掘った部分との関係も考慮しつつ進めなければならず、頭を悩まされます。
 それが終わると、水糸を張り、基準点を決めてそこから測りたいポイントまでの距離を測りながら記録していきます。その各層も単純に地面に平行になっているわけではなく、人の手が加わっているため掘り込み穴があったり、盛り土があったりしていて複雑に入り組んでいるため、なかなか思ったとおりには進んでくれません。それができると、壁面にある、目立つ石や遺物についてもその場所と石の大きさを測り図面に記録していきます。これも石の形を大きさどおりに描くのは非常に難しいです。
 その作業が辛うじてできると、次はその各層に対して土の色があとになってもわかるように土色帳(土の色をつけるときの基準になる超重要な本)に基づいてつけていきます。ここまでやってやっと一枚の壁面について終了するわけですが、一日がかりの仕事になってしまいます。

 私は最新の方法と今までの方法との二種類の記録方法に、今回の現場で、接することができました。どちらがいいか悪いかということについてはまだまだ何かを言うことはできませんが、考古学の記録には客観性に加えて、これからはその考古学によって得られた記録が、歴史学においてはもちろんのことより広い学問分野の中で、それが『情報として共有される』ということが重要になってきていることを実感することができました。そういった部分において実験を試みている今回の現場に参加できたことは、非常に貴重な経験となっていますし、歴史学というものを考えていく上でも貴重な財産となっていくと思います。


土層断面計測中



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