発掘物語 | 執筆記事|同志社大学歴史資料館

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ピットを掘る

三阪 一徳
同志社大学 文学部2回生

最終更新日 2002年4月26日

はじめにピットとは何かということですが、ピットとは柱を立てるためになどに掘った穴のことを言います。

「ピットを掘る」には、まずトレンチ内の土層面を手ガリなどでなるべく平らに掘ることからはじめます。その作業の後、土層面に現れる土色や土質の違いから遺構を検出します。ここまでは、現場の作業員の方に作業を進めていただきました。

今回私が担当した遺構は、調査地東端にあるトレンチ内の江戸時代の層から検出されたピットです。まず先ほど検出されたピットを、さらにその輪郭が明瞭になるように、ピットとその周囲を手ガリできれいにし、ピットの輪郭を再確認しました。このピットの輪郭は非常にわかりやすいものでした。

これでピットの形が平面的に確認できるのですが、そのピットと思われる影は土層面の影などであり、ピットではない可能性があります。そこで垂直方向の確認として、ピット内の土層を数センチ均等にガリや手スコで掘ります。ピットの輪郭は確認できなければ、その影について再検討をしなければなりません。

認識できればピット内の土層をガリや手スコを用いて半掘し、土層断面を観察します。半掘する際、土層を床面まで掘り下げるわけですが、注意しなければならないのは、土色や土質をよく観察して床面を掘りぬいてしまわないようにすることです。また、遺物が出土した場合は、状況に応じて竹ベラや、ハケなど手先の細かな作業ができる道具を用いて、遺物を傷つけないように採集します。取り上げた遺物は、遺跡名、トレンチ名、層位名、遺構名、日付などを記入したラベルを添えて整理箱に入れておきます。また、重要な遺物の場合は、カメラとデジタルカメラで出土状況写真を撮り、必要に応じて写真測量も行います。これらの作業を行うのは、後に研究を進める上で、その遺物出土時の情報がより多いほど、資料として有効だからです。

半掘と土層断面の観察が終われば、いよいよピットを完掘します。この作業も半掘と同じ要領で進めます。そうすると、ピットの全貌が明らかになります。しかし、私にはそれがどのようなピットであるのかはわかりませんでした。ただ気になったのは、このピットの西側50センチほどのところに同じくらいの大きさのピットが検出されていたことです。

以上で「ピットを掘る」ことができたわけですが、すべての作業工程において言えることがいくつかあります。一つ目は、理論的思考を持ちながら作業を進めることです。ピットの形や土層の堆積がなぜそのようになるのかを自分で理解し、また他者に説明できるようにしておかなければいけません。

二つ目は、排土は常に除去し、土層面をきれいにしておくことと、土層の湿り具合や光量をできるだけ一定にすることです。このようにすれば、土層を正確に、また客観的に観察することができます。

三つ目は、掘削された土層は二度と復元できないことを認識しておくことです。


発掘調査現場での作業風景。



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