鋤柄 俊夫
同志社大学 歴史資料館 専任講師
最終更新日 2002年4月8日
発掘物語7号で鎌倉時代の遺物の出土したことをお知らせいたしましたが、今度は平安時代の焼き物が出土しました。場所は新町北別館地点の南東地区です。
発見された遺物は、素焼きの高坏の脚の部分と、身の一部と蓋のつまみ、それから緑釉陶器と布目の付いた瓦です。ただし布目の付いた瓦以外はいずれも室町時代の層からの出土です。また布目の付いた瓦は鎌倉時代終わりから南北朝時代くらいの時期の土坑(柱穴を埋めた跡でしょうか)から出土しました(一緒に出土した素焼きの土器(かわらけ)の形から時期がわかりました)。
ですから、これらの焼き物は、いずれもどこかから運ばれた土の中に入っていたということになって、この場所に平安時代の建物があったということを示すものではありません。遺物は常に遺跡の中で考えなければいけません。発掘調査で重要な点のひとつです。
しかし、その時代に川が流れていた訳でもありませんから、これらの遺物がそれほど遠くから運ばれてきたとは考えられません。
前にもお話ししましたが、これらの遺物が使われていた時代には、この場所は平安京の北の外でした。いったいそこにはどんな世界がひろがっていたのでしょうか。