発掘物語3 | 執筆記事|同志社大学歴史資料館

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第4回 : 「土層」からわかること

松田 度
同志社大学 歴史資料館 調査研究員
同志社大学 大学院 博士課程後期

最終更新日 2003年5月2日

旧第1従規館地点での発掘調査が進み、調査区内での土層(土の堆積)が把握できるようになりました。 また、現在の地表面から約2mで地山に達することもわかりました。

以下、基本的な層序(土の堆積の順番と年代)を、上から順に紹介します。

  • 第1層(18~20世紀)
    • 江戸時代後期から現代までに堆積した層です。
  • 第2層(18世紀)
    • 江戸時代後半期の焼土層です。火事で燃えたものが多く含まれています。
  • 第3層(17世紀後半)
    • 江戸時代前半期の堆積層です。
  • 第4層(17世紀前半)
    • 江戸時代初頭ごろの堆積層で、その上面に焼土を含む遺構が掘り込まれています。
  • 第5層(16世紀)
    • 室町時代後期の堆積層。安土桃山時代の遺構がその上面で見つかりました。
  • 第6層(16世紀前半以前)
    • 室町時代以前の堆積層。黒褐色の土で、遺物はほとんど含まれていません。上面で16世紀前半代のかわらけだまりがみつかっています。
  • 地山(自然堆積層)
    • 礫を含む粘土層です。

第3層は、出土遺物の様相と、新町キャンパスの旧北別館地点の調査成果などもふまえると、1730年に生じた享保15年の大火による焼土ではないかと想定できます。 発掘物語3第2回のゆがんだ染付碗も、この火災にともなう遺物です。 第4層の焼土に相当する火災については、現在検討中です。 第5層以下の堆積については、昨年度調査された旧大学会館地点の発掘調査と共通します。

土層の観察と記録は、地味ですが非常に重要なものです。 というのは、このような土層の観察によって、私たちは数百年の歴史の縮図を、そこに垣間見ることができるからです。

私たちが住む京都の町は、その市街地のほとんどが「巨大な遺跡」のうえに成り立っています。 地下2mという土の堆積のなかにも、これだけの歴史が詰まっているということに あらためて歴史の奥深さを感じます。 今後の調査でも、土層のむこうにある「歴史の縮図」を、見つめてゆこうと思います。


トレンチ2の壁面



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