最終更新日: 2004年1月20日

岩倉大鷺町地点
発掘調査報告

目次

  • はじめに
  • 例言
  • I 位置と環境
  • II 調査の成果
  • III まとめ(松田)
  • 参考文献
  • 抄録
  • 図・表一覧
  • 写真一覧

  • ※ この報告で用いた遺構・遺物実測図については、PNG形式による縮小画像のみの閲覧となっております。
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    岩倉大鷺町地点 発掘調査報告

    同志社大学外国人客員教員宿舎(看山ハウス)新築工事にともなう発掘調査


    III まとめ

     今回の発掘調査では、条里地割に関連する遺構を検出することができた。この条里地割の名残については、明治年間の地形測量図にも記載されており、同志社商業高校が昭和4年(1929)に当地へ移転する以前の地割と景観を知る資料となる。今回の調査では、調査面積の制約もあり、条里地割の成立時期を厳密に決定できる資料を得ることができなかったが、条里地割遺構の盛土内に包含されていた須恵器の年代から、その成立が8世紀をさかのぼることはないといえる。また、同志社高校敷地内の西側(同志社高等学校理科館地点)において行われた1990年の調査で、沼地状地形の上に堆積していた包含層から10世紀代に位置づけられる灰釉陶器が出土していることも、上記の年代を考えるうえで参考となる。よって、すくなくとも現状では、9・10世紀頃にはこの条里地割が成立していたと考えてもよいのではないだろうか。  

     今回の調査で注目されるのは、少量ではあるが土器・陶器とともに、鉄滓が出土している点である。これは、周辺に鍛冶関連の空間が存在していたことを示すとともに、古代の岩倉地域でほぼ唯一の集落遺跡といってよい岩倉忠在地遺跡や、今回の発掘調査地点の性格を考えるうえでも重要な発見である。  

     岩倉地域は、すでにふれたように平安京に供給される土器・瓦の主要生産地でもある。これらの需要にともなう当地域の重要性の高まりや、安定したやきもの・瓦製品の供給を考慮した製品集散地(たとえば屯倉・御厨に代表される官営施設)の造営が、上記のような条里地割の施行につながったとも考えられる。古代窯業生産との関係で論じられることの多かった当地において、条里地割と鍛冶に関連する資料が得られたことは、岩倉地域での条里の成立背景、生産・流通経路の理解に、大きな手がかりを与えるものといえよう。

     ところで今回調査を行った地点は、半町ほど条里地割とずれをみせる区画の南端にあたる。「門田」という字名からみても、今回みつかった条里地割遺構が、中世以降に顕著な方形区画を伴う居館の一部として利用された可能性もある。今回の調査では居館にともなう遺構と考えられるものは確認できなかったが、中・近世に位置づけられる土器・陶磁器が少量出土している。周辺の発掘調査でも中・近世の土器・陶磁器の出土が確認されており、後世に条里の整備がおこなわれたことも考慮しておく必要がある。土師器焼成に代表される近世以降の当地の様相もまた、消費地としての都市遺跡である京都に程近いという位置関係、上記のような条里地割の整備と新たな地割の成立のなかで読み解くならば、製品の集散と宿場町的な機能を有した町並みの景観として復原することも可能である。

     また、今回検出した耕作にともなう遺構とその埋没状況から、当地の土地利用が1929年の同志社専門学校高等商業部の移転以後大きく変わったことが窺える。岩倉地域における近代化資料のひとつとして、貴重な資料を得たといえる。

     本報告では、岩倉盆地北部の歴史的様相や、岩倉盆地西部の生産遺跡群での研究成果を十分に生かすことができなかった。これらを含め、検討しきれなかった多くの問題点を議論し、岩倉地域史の実態を解明してゆくことがわれわれに残された今後の課題である。


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